1.妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)とは?
妊娠高血圧症候群とは、読んで字のごとく妊娠中に血圧が異常に上昇してしまう病気です。
しかしながら、この病気の本質は血圧が高くなってしまうということではなく、胎盤を含むお母さんの全身の血管が障害を受けてしまい、様々な異常を来してしまう事にあります。
人間の血管を全てつなげると、約10万Kmと言われていて、実に地球を2周半できる距離です。それらの血管全てが障害を来すので、様々な合併症を来してしまうのです。
生活習慣病の代表疾患である高血圧症や糖尿病も同様ですが、血圧上昇や血糖上昇そのものよりも、全身の血管障害から発症する心筋梗塞・脳梗塞・出血・動脈硬化・肝臓障害などが本当に怖い症状なのです。
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2.妊娠高血圧症候群の原因は?
妊娠高血圧症候群の原因は未だ分かっていない事も多いのですが、妊娠初期(妊娠5ヶ月頃前)に胎盤が作られる時期に異常を生じることが理由と考えられています。
そのため妊娠高血圧症候群を予防する事は非常に難しいのですが、リスクが高くなる要因はある程度判明しています。以下の要因に当てはまる方は注意しましょう。
妊娠高血圧症候群のリスク因子
- 高齢妊娠(35歳以上、特に40歳以上)
- 若年妊娠(15歳以下)
- 初産婦
- 肥満(BMI 体重 Kg/ 身長 m2>25)
- 高血圧(妊娠初期から高血圧を認める)
- 前回妊娠が妊娠高血圧症候群だった
- 糖尿病
なかなか確たる予防策がないのが現状ですが、リスクが高くなる原因もわかっていますので、それらに当てはまる方は妊娠初期から食事には気をつける様にしましょう。
妊娠高血圧症候群の原因とされる塩分の過剰摂取や食べ過ぎを避けるため、以下に食事療法のポイントを解説します。
3.高血圧は食事でコントロール!特に気を付けたい食事の具体例
妊娠高血圧症候群のリスクが高い妊婦さんに対して予防する試みはいくつも行われていますが、完璧に予防できる方法は見つかっていないのが現状だそうです。しかし、妊娠期のみならず、どのライフステージにおいても毎日の食事内容を意識することによって血圧のコントロールや意識は非常に大切な事となります。
一般的に、塩分の過剰摂取や食べ過ぎによって妊娠高血圧症候群になりやすくなるといわれています。
塩分の過剰摂取を控える工夫
妊娠高血圧症候群の予防の段階では、塩分が1日10g以内になるよう勧められていますが、発症してしまった場合は1日7~8gと制限します。
塩分は味噌や醤油などの調味料だけに含まれているわけではなく、加工食品にも含まれています。
・スナック菓子やインスタント食品
・ちくわやはんぺんなどの練り物食品
・ハムやベーコン、ウインナーなど加工肉
毎食こういった食品を含む食事をしてしまうと、いくら調味料を控えたとしても自然と塩分過剰になってしまいます。
全く利用してはいけないわけではないですが、せめて1日1食までにして、肉や魚は加工されていない、そのままの素材の状態で調理することをお勧めします。
自炊するときの注意・工夫
自炊するときは、塩分を控えるよう、以下の工夫もしてみましょう。
塩味以外の味や香りを利用する。
塩味が少ないと味気なさや物足りなさを感じられるかもしれませんが、酸味・辛味・旨味を上手に利用することによって塩分を控えることが可能となります。また、柑橘類の爽やかな香りや、油や種実類の香ばしさといった香りも減塩による味気なさを補うことができます。
◆具体的例
酢・レモン・柚子・すだちなどの酸味や香り、カレーや柚子胡椒・わさび・生姜などの辛味や香り、きのこ・昆布・かつお節などで出汁をしっかりとり、旨味を利用した料理。
ただし、カレーのルーには塩分が多く含まれているので、カレー味にする場合はカレー粉、生姜やわさびのチューブタイプには塩分が含まれているので、出来れば食べる直前に生のものを直前にすりおろしたり刻むようにしましょう。その方が、より香りを感じ、美味しく感じることができます。
・煎ったゴマを和える
・サラダに種実類を加える
これらの方法でも、香ばしさや食感を楽しむことができます。しかし、市販の種実類は食塩が加えられている製品がありますので、食品成分を確認し、無塩タイプを選びましょう。
また、減塩味噌や減塩醤油の利用は比較的簡単に減塩できますが、使いすぎてしまうと意味がありません。
調理法や調味料の取り扱いを工夫する
実は同じ塩分濃度でも、熱い料理よりも冷めた料理の方が塩味を感じやすいので、汁物でしたら少し冷ました状態で味付けをしましょう。
◆具体例
・焼き物は火を通した後に塩を振る
→塩を加えてから焼くと、塩が食材の中に浸透して味が感じにくくなってしまうことがあります。
・醬油やソース、ケチャップは食材にかけずに、少量ずつつけるようにして食べる
→スプレー式容器を使う方法もあり、かけた時に香りも広がり、薄くかかるのでかけすぎ防止にもつながります
・サラダにはドレッシングの代わりにオリーブオイルやアマニ油などの良質な油をかける
→ドレッシングにも塩分が含まれているので、ティースプーン1杯を目安にかけて食べるのもお勧めです。
カリウムを摂取して、体内のナトリウムを排出させる
どんなに減塩を意識しても難しいのが現状なので、体内に入れる量を少なくするのはもちろん、体外に出すことも意識していくことが大切です。
生野菜や果物に豊富に含まれるカリウムには、余分なナトリウムを排出させる働きがあります。1食の中の1皿は生野菜サラダにする、果物も摂るなどしていきましょう。
ただし、果物は夜間に食べると体脂肪が増えやすくなるので、朝食や昼食、夕方までの間食で食べるようにしましょう。
以上のことをふまえ、3日分の献立例を作ってみましたので参考にして下さい。
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1日目
朝食:全粒粉パン、野菜たっぷりスパニッシュオムレツ、サラダ、ヨーグルト、フルーツ
昼食:雑穀米、肉野菜炒め、サラダ
夕食:雑穀米、豆腐ハンバーグ~きのこあんかけ~、付け合わせのサラダ、ほうれん草の胡麻和え、具沢山味噌汁
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2日目
朝食:雑穀米、納豆、具沢山味噌汁、豆腐サラダ、フルーツ
昼食:魚介パスタ、ゆで卵付きサラダ、ヨーグルト
夕食:雑穀米、鶏肉とカシューナッツの炒め物~柚子胡椒風味~、具沢山華風スープ、杏仁豆腐
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3日目
朝食:雑穀米、鮭ときのこのホイル蒸し、小松菜としらすのお浸し、サラダ
昼食:オムライス(トマトソースかけ)、付け合わせのサラダ、具沢山の野菜スープ、フルーツ、牛乳
夕食:雑穀米、野菜たっぷり豚シャブ(ポン酢)、具沢山味噌汁、サラダ
外食するときの注意・工夫
外食は時々であれば気分転換になったり、普段口にすることの少ない食材を食べられる良い機会になることもありますが、どうしてもエネルギー量や塩分が高くなる傾向になり、野菜や果物が不足しがちになってしまいます。
◆具体例
・ラーメンやうどんなどの汁は飲まない
・なるべく野菜を多く摂れるメニューを選ぶ
・サラダへのドレッシング量を注文できるお店でしたら、少なめにするか、断る
・勿体ないと思われるかもしれませんが、あまりに味の濃い料理は残すことも時には大切
最近では、メニュー表やホームページに栄養成分が表示されているレストランも増えてきておりますので、よく行く場所のメニューを確認してみると良いです。1食につき、どんなに多くても塩分を5gまでに抑え、外食した日の自宅での食事はいつも以上に減塩に十分注意していきましょう。
4.食欲を我慢できない!高血圧でも食べてもいいものはある?
食べ過ぎないようにするための工夫
食べ過ぎも妊娠高血圧症候群の原因の一つと言われています。
摂食量が増えるとエネルギーのみならず、自然と塩分量も増えてしまいます。まず、食べ過ぎないようにするには“食べ方”を変えることが大切です。一度の食事の中で、主食・主菜・副菜(最低2品)が揃ったバランスの良い食事内容を意識した上で、以下の事を実践してみましょう。
・噛む回数(1口20~30回を目安に)を意識する。
・野菜類から先に食べる。
・温かい料理を入れ、ゆっくり食べる。
・ごはんは、白米から雑穀米などに変え、自然と噛む回数が多くなるものを取り入れる。
食べ過ぎ防止の基本ではありますが、よく噛みゆっくり食事をすることによって、満腹中枢が刺激され、食べ過ぎ防止に繋がります。また、野菜から先に食べることによって食後の血糖値の変化が緩やかになり、体脂肪がつきにくくなります。
以上のことを意識することによって食欲コントロールは適切になるはずですが、それでもどうしても我慢できなくなってしまったら、まずは以下の食品は避けるようにしましょう。
・菓子全般(特にスナック菓子)
・インスタント食品
・菓子パン
・ファストフード
・低カロリー、カロリーゼロと表示されているドリンクや菓子類
どれも手軽に、そしてつい多く食べがちになってしまいます。ですが、塩分・エネルギー共に高いのでお勧めできません。
また、低カロリー・カロリーゼロと表示されている食品は、自然界に存在しない人工甘味料が添加されている場合が多く、母体や胎児に悪影響を及ぼす可能性があります。大切な赤ちゃんの為にも、これらの食品を食べたくなったとしても、一呼吸おいて避けるようにしていきましょう。
逆に食べて良いものは、3食の食事だけでは足りない栄養素を含む食品となります。
◆具体例
・主菜(たんぱく質)が少なめの場合:牛乳・ヨーグルト・チーズ・無調整豆乳・ゆで卵を
・副菜(ビタミン・ミネラル)が少なめの場合:野菜スティックや野菜ジュースなど
これらの食品は比較的手軽に食べられます。
ただ、野菜ジュースは製品によって食塩が添加されているものもありますので、塩分不使用で野菜汁100%のものを選びましょう。その他は、果物や無塩タイプのクルミやアーモンドなどの種実類をしっかりよく噛んで食べるのもお勧めです。
栄養について解説した管理栄養士
5.妊娠高血圧症候群が、お母さんや赤ちゃんにもたらす影響
妊娠高血圧症候群と診断された場合は食事療法や降圧薬により悪化を防ぎますが、重症化すると合併症を発症することもあります。
妊娠高血圧症候群によって起こる合併症を羅列すると大変なことになりますが、お母さんの影響・赤ちゃんの影響に分けて説明します。
お母さんへの影響
血圧上昇はもちろんですが、おしっこを作り出す腎臓は実は血管の塊です。腎臓内の血管が障害を受けることによって、本来尿に排出されないはずのタンパク質が漏れ出てしまいます(タンパク尿)。あまりに酷くなると腎不全となる可能性もあります。
さらに、脳の血管が破れてしまい脳出血が起こる可能性や、脳が浮腫んでしまい全身が痙攣してしまう子癇(しかん)発作を起こすこともあります。
また肝臓も血管が豊富な臓器ですが、肝臓も障害を受けて急性脂肪肝やHELLP症候群といった妊娠に特異的な病気を発症することもあります。
さらに胎盤も血管の塊ですので、胎盤が突然剥がれてしまう常位胎盤早期剥離や胎盤梗塞などの異常が起こることもあります。
赤ちゃんへの影響
胎盤は赤ちゃんへ栄養を送る役割を担っていますが、胎盤の異常によって赤ちゃんの体重が増加しにくい子宮内胎児発育不全を来します。
あまりに増悪すると子宮内で赤ちゃんの状態が悪くなる胎児機能不全や、最悪命を落としてしまう子宮内胎児死亡となってしまう事もあります。
様々なケースを羅列してしまいましたが、お母さんへの影響も赤ちゃんへの影響も妊娠が終了したら速やかに軽快することがほとんどです。
そのため妊娠高血圧症候群で最も大切なのは、早期発見と適切な時期での出産なのです。
6.妊娠前・妊娠中に血圧が高いと言われたら
妊娠高血圧症候群は、胎盤形成の異常が主原因ですので完全に予防する事は難しいです。
しかしながら、様々な妊娠合併症が起こる前に血圧上昇が認められるため、日々の血圧に注意すれば比較的早く対応することができます。
そのため上記であげた妊娠高血圧症候群のリスク因子が一つでも当てはまる方は、自宅で血圧を測定して記録するようにしましょう。
血圧測定器は家電量販店でも5000円程度で簡単に手に入りますし、スポーツジムなどで定期的に測定しても良いです。購入する際は手首で測定するタイプよりも上腕で測定できるタイプを購入するようにして下さい。測定回数は1日1回で十分です。日々の変化がわかるようになるべく同じ時間に測定しましょう。
上の血圧(収縮期血圧)が140mmHg以上、下の血圧(拡張期血圧)が90mmHg以上のいずれかに当てはまる場合はすぐにかかりつけの病院に相談して下さい。また妊娠初期の血圧が130/80mmHgを超える場合も注意が必要です。
特殊な高血圧:白衣高血圧
病院って結構緊張する場所です。実は病院で血圧を測ると、緊張から血圧が高く測定されてしまう方が結構いらっしゃいます。その様な方も自宅で血圧を測定することをお勧めします。
7.まとめ
この記事では妊娠高血圧症候群と食事での注意点について説明しました。なかなか確たる予防策がないのが現状ですが、リスクが高くなる原因もわかっていますので、それらに当てはまる方は妊娠初期から食事には気をつける様にしましょう。
また最大の特徴として、自宅でも簡単に測定できる指標である血圧が、まず上昇してくる疾患ですので心配な方は自宅で血圧を測定する様にしましょう。
